がんは日本人の1/2が患う病(大腸がん 定期的な検診で早期発見を)


がんは日本人の1/2が患う病(大腸がん 定期的な検診で早期発見を)

日本人の2人に1人が一生のうちに一度はかかり、3人に1人が命を落とすと言われている「がん」。日本人にとって身近な病気の一つだが、その対策には自覚症状のない時期に検診を受け、早期発見、早期治療することが重要だ。

全身のあらゆる場所に発生する可能性のある“がん”。胃や肺、肝臓などの内臓はもちろん、血液や骨、皮膚などにできるがんもある。中でも罹患率、死亡率共に高い割合を占めているのが、大腸がんだ。2022年には、女性のがん部位別死亡数で最多、男性でも肺がんに次いで2番目に多い。松江医師会副会長を務める堀内科胃腸科医院の堀浩太郎院長は「食事の欧米化などの影響で大腸がんの罹患者は右肩上がりに増えており、この40年で7倍になっている。島根でも全国同様、女性のがん部位別死亡率で大腸がんが最多を占める」と警笛を鳴らす。一方、掘氏が強調するのが、大腸がん罹患者の生存率の高さだ。「大腸がんは早期検査、早期発見によって克服できる病気だということも知ってほしい」

大腸がんと診断されて5年後の生存率は年齢や部位によっても異なるが、進行度がステージⅠやⅡのような初期段階では80~90%と、他の部位に比べても高い。堀氏は「検診はとても簡単。罹患リスクが高まる40歳代になれば年に1度は受けてほしい」と推奨する。大腸がんの一次検査は、便に潜む血液の有無を調べる「検便」で行うことができ、郵送での検査を実施している市町村もある。

重要なのは、便の検査で”がん”の疑いを指摘された場合だ。堀氏は「松江市では精密検査対象者の約4分の1が未受診。しかし、対象者の3.8%が精密検査でがんと判明しているほか、29.2%ではがんの予備軍とも言える『線腫』が見つかっている。良性ポリープの一種である線腫を、がん化する前に切除すれば罹患を防ぐことができるし、がんと診断された場合でも早期治療で根治できるケースが多い。精密検査は必ず受けてほしい」と訴える。

ポリープ切除と聞けば身構える人も少ないかもしれないが、大腸がんの精密検査で多く採用されている内視鏡検査は近年著しく機器や技術、前処置薬などが進化し、患者の負担も大きく軽減している。複数のポリープを30分程度で切除し、日帰りで帰れる場合も少なくない。仕事や育児に忙しい働き盛りでも、気軽に検査・治療できるのだ。

治せる病を放置する理由はない。定期的な検診で自分の身体をチェックし、疑いがあれば必ず精密検査を受診しよう。

(2024年 3月28日 掲載)