日本人の2人に1人が一生のうちに一度はかかり、3人に1人が命を落とすと言われている「がん」。日本人にとって身近な病気の一つだが、その対策には自覚症状のない時期に検診を受け、早期発見、早期治療することが重要だ。
ヘビースモーカーが肺がんになり、大酒飲みが肝臓がんになる―。
そんなイメージを抱いている人も依然多いのではないだろうか。「たばこやアルコール、そして加齢はすべてのがんに共通する原因で、たばこを吸う人が肺がん以外のがんになる可能性も非常に大きいです。一方、全くたばこを吸わない人が肺がんになる可能性もある」と注意を促すのは、呼吸器・臨床腫瘍学を専門に研究する島根大学医学部の礒部威教授だ。「たばこに由来するがんは、実は煙を吸い込む鼻腔、口腔、咽頭、食道なども多いです」
近年喫煙率は減少傾向にあるが、島根県では、20~40代の男性の約3割は喫煙しているという。「定年後など人口が多い年齢層で禁煙する人が増えているので全数は減っていますが、ストレスが多い現役世代は今も結構喫煙しています。喫煙のリスクをもっと知ってほしい」と強調する。
がんが怖い理由の一つは、多くの場合、進行するまで自覚症状がないこと。特に、肺や膵臓、大腸など体の奥深くにある臓器の場合、がんができても痛みを感じない。礒部教授は「近年主流のフィルター付きたばこは、肺の奥の方まで煙が到達します。ここにがんができても、痰や血痰が出にくいので以前より異変に気付くのが遅くなっています」と警鐘を鳴らす。
そんな中、早期発見に有効なのが定期的な検診だ。市町村ではがんの種類によって検診の対象年齢や頻度を提示。たとえば、肺がんでは、40歳以上年1回が推奨されているが、コロナ禍の受診控えが未だ戻っていないのが実情だ。自覚症状がない早期がんの段階でがんを発見するには、定期的ながん検診の受診が大切である。自覚症状がある場合は検診を待たず、すみやかに医療機関を受診する必要がある。
「がんだけでなく、非結核性抗酸菌症や間質性肺炎、慢性閉塞性疾患など肺の病気は近年増えています。がんなどの生活習慣と違い、喫煙歴のない人、痩せている人などにも多く発症しているのです。積極的な受診でがんはもちろん、他の病気の早期発見にもつなげてほしい」
検診で早期発見できれば治療で助かる可能性も高くなる。自分や大切な人の命を守るため、がん検診を継続して受診しよう。
フィルター付きのタバコの普及によって左右の肺の入り口に近いところに発生する肺門型肺がんは減り、肺の奥に発生する末梢型肺がんが増加している。
肺には痛みの神経が無いので、肺がんが発生しても初期には痛みもなく、末梢型肺がんは咳、痰、血痰などの症状も出にくいので、肺がん検診による早期診断が重要となる。
(2023年11月24日 掲載)