かかりつけ医が膵がん意識 松江赤十字病院串山部長 患者にエコー受診呼びかけ


かかりつけ医が膵がん意識 松江赤十字病院串山部長 患者にエコー受診呼びかけ

すい臓がんは5年相対生存率が1割に満たず、がんの中で最も低い。島根県は青森、北海道、鹿児島に次ぎ4番目に死亡率が高く(国立がん研究センター2019年調べ)、中でも松江医療圏がより高いため、松江市医師会は2018年に「松江市膵(すい)がん対策委員会(膵がんプロジェクト)」を立ち上げ、患者の早期発見に努めている。

すい臓は、胃の裏側にある約15センチの左右に細長い臓器で、全体に「すい管」という細長い管が網目状に通っている。すい臓は「すい液」というタンパク質を溶かす消化液を作り、十二指腸に送る外分泌機能と、血糖の量を調節するホルモンを作る内分泌機能を持つ。

すい臓がんは、すい管の細胞から発生するものがほとんど。症状が表れにくく、早期発見が難しい。進行してくると腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸(おうだん)、腰や背中の痛みなどが出るが、見つかったときには病状が進んでいることが多い

脂肪を分解する外分泌機能の低下から下痢を引き起こしたり、内分泌機能が働かなくなったりする。急な糖尿病の発症や、糖尿病患者で食事や薬の量を変えていないのに、急に血糖コントロールが効かなくなるなどの症状が出た場合は注意が必要だ。

全国4万2千人の罹患(りかん)、者のうち3万7千人(2018年調べ)が死亡しており、非常に死亡率が高い。島根県の罹患者数は279人で死亡者は224人(同)だ。

かかりつけ医が膵がん意識 松江赤十字病院串山部長 患者にエコー受診呼びかけ

すい臓がんの5年相対生存率は男女ともに1割にも満たない=国立研究開発法人国立がん研究センター

これを受け始動したのが膵がんプロジェクト。かかりつけ医が、すい臓がんの可能性を意識して診察し、リスクのある患者に積極的に腹部超音波(エコー)の検査を呼びかける。

すい管の拡張やすい臓の中に嚢胞(のうほう)が見られたら、がんがひそむ可能性があり、連携する総合病院に紹介し、CTやMRI検査で詳しく調べる流れになる。プロジェクトでは治療が可能で5年生存率が約30%のステージⅡまでに見つけることを目標としている。

21年までに17の医療機関が参加し、エコー検査した234人中14人にすい臓がんが見つかった。6%の発見率で、全国各地で進められるプロジェクトの中でも高い確率という。

すい臓がんの早期発見には、すい臓がんのリスクがあると考えられる「危険因子」を有する人が定期的な検査を受けることが必要。松江赤十字病院(松江市母衣町)消化器内科部長で松江市膵がんプロジェクトの串山義則委員長は「すい臓がんの家族歴がある人や糖尿病を新規発症した人、コントロールが難しくなった人、肥満、喫煙、飲酒、慢性膵炎を抱えている人は注意してほしい」と呼びかける。

(2022年8月29日掲載)