2回法で大腸がん早期発見 松江赤十字病院多田副部長 便潜血の定期健診重要


2回法で大腸がん早期発見 松江赤十字病院多田副部長 便潜血の定期健診重要

5大がんの一つである大腸がんの死亡率は男性3位、女性は1位と高い。がんになる前のポリープ(大型腺腫)の段階で摘出すれば、死に至ることはほぼない。「痔(じ)による出血だから」などと、勝手な自己診断で放置しがちだが、症状がある場合は進行しているケースが多い。松江赤十字病院(松江市母衣町)消化器内科の多田育賢副部長は、だからこその定期検診を呼びかける。

大腸は、肛門へと続く全長約1・5~2メートルの管状の臓器。大腸がんは、内側の粘膜に発生するがんで、前段階であるポリープが大きくなる過程でがん化するものと、粘膜の正常な細胞ががん細胞に変化するものに大別される。

大腸がんは、がんに罹患(りかん)する人の中で男性は3番目、女性は2番目に多く、高齢化と食の欧米化により患者は年々増加している。島根県の罹患者(2018年)は1229人(上皮内がんを含む)にのぼる。

便が細くなったり血便が出たりする自覚症状があるが、症状が出てからの受診では、進行したがんが見つかることが多い。島根県のデータ(2014年~18年調査)によると、進行がんが見つかる割合は症状があり医療機関を受診した場合では54.8%と、症状のない検診の段階での19.8%の約2.7倍も高くなっている。

2回法で大腸がん早期発見 松江赤十字病院多田副部長 便潜血の定期健診重要

症状が出てから受診した場合、半数が進行がんで見つかる=島根県地域がん登録データ(2007年から2015年)

警告症状は、急に出現した便秘、便が細いこと、特に危険な症状は「便秘だが便自体は液状であること」だという。特に大腸がん発生率が高くなる40代以降でこの症状が出た場合は注意が必要だ。

ポリープ段階で発見できればポリープを切除する治療でほぼ完治する。検診は40歳以上が対象。便に血液が混ざっていないかどうかを調べる「便潜血検査」を2日間、実施する。

この2日連続で検査する「2回法」を用いることが重要。2回ともに陽性であれば、進行がんが見つかる可能性が高くなるが、島根県の2019年度の検診受診率は7・95%と低い。

また、血液が採取され、陽性であれば精密検査の大腸内視鏡検査に進むが、その割合も71・9%(2018年時点)と放置する人が3割もいることが問題だ。

精密検査に行かない人の多くは「痔で出血しているだけ」などと自分で理由をつけがちだが、痔による出血で検査が反応することは少ないという。

大腸がん検診は、原因不明で消化管に炎症が起きるクローン病や潰瘍性大腸炎の発見にもつながる。県内では浜田市のほか美郷、奥出雲、吉賀、津和野の4町が大腸がんの無料検診を実施している。

多田副部長は「大腸がん以外の病気の早期発見にもつながる。毎年受診してほしい」と呼びかける。

(2022年7月30日掲載)