副反応が原因で積極的な定期接種の呼びかけが中止された子宮頸がん予防ワクチンが2022年4月に積極的な接種勧奨を再開した。小学6年から高校1年相当が接種対象で、娘に受けさせるか迷う保護者は多いだろうが、子宮頸がんはワクチンと検診の二つで予防できる唯一のがん。島根大学医学部産科婦人科(出雲市塩冶町)の京哲(さとる)教授は、「子宮を守るため」と積極的な検診受診や接種を呼びかける。
副反応が原因で積極的な定期接種の呼びかけが中止された子宮頸がん予防ワクチンが、2022年4月に積極的な接種勧奨を再開した。小学6年から高校1年相当が接種対象で、娘に受けさせるか迷う保護者は多いだろうが、子宮頸がんはワクチンと検診の二つで予防ができる唯一のがん。島根大学医学部産科婦人科(出雲市塩冶町)の京哲(さとる)教授は、「子宮を守るため」と積極的な受検や接種を呼びかける
子宮下部の入り口の部分を頸部、上部の袋状の部分を体部と呼ぶ。頸がんは子宮がんの約4割を占め、患者は年々増加。島根県内の2018年の患者(上皮内がんを含む)は166人、死者は14人。国内では毎年約1万人が発症し、約2800人が亡くなっている。
中でも若年化が進み、20~30代の若い女性に増えている。性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因。性交で8割が感染し、多くは2年以内に自然消滅するが、感染が長引くとがん化する。初期であれば日帰り手術での治療が可能だが、自覚症状がほとんどないため、放置して進行すると子宮の摘出手術が必要になる場合もある。
早期発見が何より大切。県内の市町村では、子宮頸部の細胞を調べる「細胞診」とウイルス感染の有無を調べる「HPV検診」の併用検診を実施している。 さらに、ウイルスの感染自体を防ぐ子宮頸がん予防ワクチンも有効だ。性交渉を持つ前の免疫を獲得しやすい10代前半での接種がより有効で、世界でも約100カ国がこのワクチンを導入しており、世界保健機関(WHO)も安全性を確認したと発表する。
自治体が接種券を兼ねた予診票を、小学6年~高校1年相当の女子や保護者に個別に送り、接種を促しており、この年代の女子は公費による「定期接種」の対象で、無料で接種できる。
無料接種は、HPVのうち二つの型の感染を防ぐ2価と、さらに二つの型が加わった4価のワクチンの2種類から選べ、子宮頸がんの原因となるHPVの60~70%をカバーする。いずれも腕に針を刺す筋肉注射で、決められた間隔で計3回接種する。
HPVワクチンの定期接種は2013年に始まったが、接種後に全身のしびれなどを訴える人が相次ぎ、同年に国が積極的な接種の呼びかけを中止。その後、国内外で安全性やがんを予防する効果のデータが蓄積され、再び個別に接種を促すことになった。
島根県内では、定期接種期間を逃した17~25歳のキャッチアップ接種を含め、個別通知が8月末に終わる予定。ワクチン接種後に不安や異常を感じた場合は、かかりつけ医や接種医に相談した後、医師の紹介で、県が選定した協力医療機関の島根大学医学部附属病院小児科への紹介など、不安を低減する体制を整えている。
京教授は「子宮を失えば、子どもを授かれなくなり、つらい思いをする。だからこそ早期発見が大切。ウイルス感染防止のワクチンと子宮がん検診を心がけてほしい」と話す。
(2022年6月30日掲載)